- 研究成果
他の星で生まれた彗星の素顔に迫る―すばる望遠鏡で見えた3I/ATLASの変化―
太陽系の外から飛来した「アトラス彗星」(3I/ATLAS、C/2025 N1)をすばる望遠鏡で調べた結果、彗星(すいせい)の周りに広がるガスの雲に含まれる水(H2O)に対する二酸化炭素(CO2)の割合が、太陽系の一般的な彗星より高く、しかも太陽への接近に伴って変化した可能性が明らかになりました。この彗星の表層と内部では物質の組成が異なる可能性を示す成果で、他の恒星系で形成された小天体の性質や進化を理解する上で重要な手掛かりとなります。
恒星間天体は、太陽系の外にある別の恒星の周りで生まれた天体が、宇宙空間を旅して偶然太陽系に入り込んできたものです。こうした天体は、太陽系以外の環境で作られた物質を直接調べることができる「宇宙からのサンプル」として注目されています。2025年7月に発見されたアトラス彗星は、これまでに確認されたなかでわずか3例目の恒星間天体です。2025年10月29日に1.35天文単位(1天文単位は太陽と地球の平均距離)という距離で太陽に最接近し、その後は太陽系から飛び去るという軌道をたどっています。研究チームは、アトラス彗星から放出されるガスの成分を調べるために、2026年1月7日にすばる望遠鏡の高分散分光器HDSを用いた観測を行いました。この観測時、アトラス彗星は太陽から離れていく途中で、太陽からの距離は2.87天文単位でした。
研究チームは、特に彗星の活動を左右する主な成分である二酸化炭素と水に着目しました。二酸化炭素は水よりも低い温度で気体になりやすいため、CO2/H2O比(水に対する二酸化炭素の比)は、彗星がどのような環境で形成され、どのような進化をたどってきたかを探るための重要な手掛かりになります。すばる望遠鏡での観測の結果、CO2/H2O比はおよそ0.3から2.1と見積もられました。一方で、宇宙望遠鏡による赤外線観測からは、太陽に最も近づく前には二酸化炭素が非常に多い状態であったことが報告されています。今回の結果はそれよりも低い値を示していることから、太陽への接近の前後でアトラス彗星から放出されるガスの組成が変化した可能性が示されました。
このような変化は、彗星の表面と内部で含まれる物質の割合が異なることや、彗星が太陽に近づき加熱されることで、ガスが放出される場所が表面からより深い部分へと移っていくことによって説明できます。
研究チームを率いる京都産業大学の新中善晴(しんなか・よしはる)専門員は、「私たちがこれまで太陽系の彗星の研究で培ってきた観測・解析手法を恒星間天体に適用することで、太陽系内外の彗星を同じ観点から比較し、その組成や進化の違いを探る研究が可能になりました。こうした天体の研究を通じて、太陽系を含むさまざまな恒星系で、微惑星や惑星がどのように形成されたのかを、より深く明らかにしていきたいと考えています」と語っています。
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